白内障は主に加齢が原因で発生し、その症状は個人によって異なりますが、80代になるとほぼ全員が発症する非常に一般的な病気です。多くの白内障は徐々に進行するため、初期段階では自覚しにくいことが多いですが、急速に進行するタイプも存在するため、注意が必要です。
主な症状としては、物が二重に見えたり、光がまぶしく感じたり、視力が低下するなどがあります。これらの症状についてご理解しやすいように、白内障の具体的な症状について詳しく解説します。
気づきにくい白内障の初期症状
白内障は水晶体が白濁する病気で、初期段階では顕著な症状が出ず、自分で白内障であると気づくことは難しいです。
特に加齢に伴う白内障では、症状が徐々に進行するため、すぐには自覚しにくいです。目の見えにくさや違和感を感じていても放置し、10年以上たって初めて医師の診断を受けるケースも珍しくありません。また、白内障は急速に進行しない限り、突然の失明に至ることはありません。
発症は両目同時、あるいは片目から始まることがあり、両目が同時に発症しても進行速度が異なることがあります。片目だけが進行している場合、もう片方の目で視力を補うため、日常生活で即座に影響が出ることは少ないです。
「日常生活に支障が出るまで眼科に行かなくてもいい」と考えがちですが、早期発見により点眼治療で進行を遅らせることもできます。
白内障の主な原因は加齢ですが、若年性、糖尿病性、アトピー性、外傷性など他の原因で発症する場合もあります。視力が低下したり、以前と見え方が異なると感じたら、年齢に関わらず眼科での検査を受けましょう。
白内障の症状
白内障が進行するにつれてさまざまな症状が現れることがあります。人によっては、時間帯や活動に応じて、複数の自覚症状が感じられることもあります。
目がかすむ

目のかすみは、白内障の典型的な症状の一つです。水晶体の白濁により光が適切に目に届かず、物がぼやけて見えたり、焦点が合わなかったりする症状です。
この現象は、曇ったレンズで撮影した写真がぼんやりとした写りになったり、曇りガラス越しにものを見ると、かすんで見える仕組みと同じです。
視力が低下する
白内障の多くは水晶体の外側から中央に向かって進行しますが、視力の低下を感じるのは濁りが中心部に達した時です。そのため初期段階では視力低下はほとんど感じられないことが多いです。
- 後嚢下白内障:初期段階から水晶体の中心部が曇るため、早い段階で視力の低下を感じることが多いです。
- 核性白内障:水晶体が黄色っぽく濁る特徴がありますが、水晶体の透過性が発症前とあまり変わらないため、ある程度症状が進行するまで視力低下を自覚することができません。
- 皮質白内障:水晶体の外側から中心へと放射状に濁りが進行します。初期段階では視力の低下を感じることは少ないです。
このように、白内障の進行と視力低下は直接比例しないことがあります。
光を眩しく感じる

白内障によって水晶体が白濁し、その透明度が低下するため、光が適切に網膜に届かず散乱します。これが原因で特に強い日差しや夜間の光源を見る際にまぶしさを感じることが増えます。
皮質白内障の場合はこの症状が顕著で、特に夜間の街灯や車のヘッドライトの光がまぶしく感じるとされています。後嚢下白内障や皮質白内障では光の散乱が起きやすく、夜間運転の際にはヘッドライトの光で視界がぼやけることがあります。
このような症状がみられたら場合、交通事故のリスクを高めるため、早期の眼科受診をお勧めします。
眼鏡が合わなくなる
白内障は多くの場合、水晶体の外側から中心部に向かって徐々に濁っていく特徴があります(皮質白内障)。一方で、核白内障のように水晶体の中心部から白く濁る場合には、白内障の進行とともに近視が進むことがあります。これは、病状の進行により水晶体が肥大し、屈折力が増加するためです。そのため、眼鏡の度数を調整しても、1年以内に再調整が必要になることがあります。
さらに、老眼鏡なしでは新聞の文字が読めなかった方が、老眼鏡を使わなくても文字が読めるようになる場合もあります。これは、視力が回復したわけではなく、白内障の進行が原因の可能性があります。核白内障は水晶体の内容物が硬く膨隆することで、「老眼のはずが最近は老眼鏡をつけなくても手元が見えるようになり、代わりに遠くが見えにくくなった」といった症状があらわれます。
ものが二重に見える
ものが二重に見えるという症状は、白内障の典型的な症状の一つです。
水晶体の内部で白く濁った部分とそうでない部分では目に入る光の進み方が異なり、ものが複数に見えるようになります。このような状態を複視と呼びますが、複視の原因は必ずしも白内障だけとは限りません(両目で見たときに複視が起きる時には、「斜視」の可能性もあります)。
複視の原因が白内障かどうかを判断するためには、早めに眼科で検査を受けることをお勧めします。
目が疲れやすい
私たちの目は、物を見る際に水晶体の厚さを変えることで焦点を調整しています。この厚さの変化には、水晶体周囲の筋肉(毛様体筋)の働きが関係しています。しかし、白内障によって水晶体が硬くなると、その収縮性が低下し、焦点を合わせるのが難しくなります。それでも、水晶体周辺の筋肉は焦点を合わせようと動き続けるため、目が疲れやすくなります。
また、まぶしさや視界のぼやけなど他の白内障の症状によって目に大きな負担がかかり、眼精疲労を引き起こしやすくなります。
近視の進行
水晶体の中央部分が濁る核白内障が発生すると、水晶体が膨らんで目に入る光の屈折力が増し、近視が進行します。そのため、これまで老眼鏡なしでは手元が見えにくかった方が、白内障が進行することで老眼鏡を使わずに手元がよく見えるようになることがあります。
日中と夜間で見え方が違う
目は、瞳孔の収縮によって入ってくる光の量を調整しています。明るい場所では光の量を減らすために瞳孔が縮まり、暗い場所では光の量を増やすために瞳孔が広がります。
高齢者に多い皮質白内障では、水晶体の外側から徐々に白く濁っていくため、明るい場所で瞳孔が縮んでいると症状に気づきにくいことがあります。反対に、暗い場所では瞳孔が広がり、水晶体の濁りが光の侵入を妨げるため、見えにくさを感じることがあります。
また、水晶体の中央部分のみが濁っている核白内障の場合には、日中は見えにくく、夜間は見えやすくなることがあります。
白内障のセルフチェック
- 年齢が50歳以上
- 新聞や本を読むと以前より目が疲れる
- 天候によって見えにくく感じる日がある
- 遠くを見たときに左右の目の見え方が異なる
- 日差しの強い場所にいると非常にまぶしく感じる
- 夜間に月や照明がにじむ(輪がかかったよう)
- 片目で見たときに物が二重・三重に見える
- テレビの字幕や人の顔がぼやける
- 老眼鏡が不要になった(近視になったように感じる)
- 眼鏡を合わせたのに3年以内に合わなくなった
- 自動車の免許更新ができなかった
- 遠くの標識が見えにくく違和感があるが傷みや充血はない
- ステロイド剤を長期間使用している
- 糖尿病を発症している
いくつ当てはまりましたか?
- 3個以下
疲れ目の可能性がありますが、当てはまった項目の中で強い症状がある場合は、白内障の可能性があります
- 5個以上
白内障を発症している可能性があります。
- 8個以上
白内障を発症している可能性が高いです。
白内障はゆっくりと進行するため、進行してから初めて症状に気付くことが多いです。定期的に自分の目の状態を確認し、以前とは違う点や見え方に違和感がないかを注意深く見てみましょう。
セルフチェックの各項目について
年齢が50歳以上
白内障の主な原因は加齢とされていますが、アトピーや紫外線によっても引き起こされることがあります。50〜60代は約半数以上、70代は80%以上、そして80代以上ではほぼ全員が白内障を発症すると考えられています。
若い方でも糖尿病、パソコンやスマホなどの強い光、紫外線、怪我などによる若年性白内障を発症することがありますが、一般的には加齢とともに発症リスクが高まる傾向があります。
新聞や本を読むと以前より目が疲れる
人の目はものを見るとき、毛様体筋(水晶体周囲の筋肉)によって水晶体の厚さを調整し、焦点を合わせます。しかし、白内障によって水晶体が白く濁ると、焦点が合いにくくなります。この状態でも目の周囲の筋肉は焦点を合わせようと絶えず動き続けるため、結果として目が疲れやすくなります。
天候によって見えにくく感じる日がある
日常的にものがぼやけて見える場合は、白内障による水晶体の濁りが原因の可能性があります。水晶体の濁りは個人差があり、進行具合によっても変わります。また、視界が曇って見えることや、天候や時間帯(昼や夜)によって見え方に違いが生じることがあります。
水晶体の濁りが進むと視力の低下を引き起こすこともありますが、白内障以外の病気によって視力が落ちる場合もあります。
遠くを見たときに左右の目の見え方が異なる
白内障は、片目だけに発症することもあれば、両目同時に発症することもあります。
片目だけに発症した場合、左右の見え方に差が生じて、それが違和感として自覚されることがあります。
日差しの強い場所にいると非常にまぶしく感じる
水晶体はカメラのレンズのように焦点を合わせる役割を果たしています。しかし、水晶体が濁り始めると、目に入った光が直線的に透過せず、散乱が生じます。水晶体の濁り進行具合や程度によっても変わりますが、光が反射または散乱することで、晴れた日や逆光の状態、また屋外での明るさによって目がまぶしく感じることが増えます。
夜間に月や照明がにじむ
白内障により水晶体が白く濁ってしまうと、目に入った光が散乱しやすくなります。
これにより、まぶしさを感じたり、光がにじむような症状が現れ、特に夜間に見えづらさを感じることがあります。
片目で見たときに物が二重・三重に見える
水晶体の濁り具合に差がある場合、片目で見たとき物が二重や三重に見えたり、視界がくすんで見えることがあります。
一方、両目で物を見たとき、物が二重・三重に見える場合には、白内障以外の疾患が原因である可能性が考えられます。
テレビの字幕や人の顔がぼやける
白内障、特に皮質白内障は進行すると、ぼやけて見える、かすんで見えづらい、霧がかかったように見える、光をまぶしく感じるといった症状が現れます。そのため、テレビの字幕が読みにくくなったり、人の顔の細部がぼやけて見えたりすることがあります。
皮質白内障は水晶体の外側から濁り始めるため、光が適切に屈折せず、このような見え方の症状が現れます。
老眼鏡が不要になった(近視になったように感じる)
核白内障は水晶体の中心部が濁り、核が硬く大きくなることで光の屈折率が変化し、結果として近視が進行する場合があります。
これにより、コンタクトレンズや眼鏡を使わなくても近距離のものが見えやすくなるため、老眼が改善したと誤解される方も多くいらっしゃいます。
眼鏡を合わせたのに3年以内に合わなくなった
視力の低下により、新たに眼鏡を購入しても視力の改善が見られない場合、白内障の可能性があります。
白内障による水晶体の濁りは眼鏡を新しくしても視力の改善が期待できないことが多いです。新しい眼鏡を使用してもすぐに視界がぼやける場合、白内障の可能性を疑いましょう。
自動車の免許更新ができなかった
白内障の進行により視力が低下すると、日常生活に影響が出ることがあります。特に、自動車免許の更新時の視力検査で基準値に達しないことが一つの兆候です。これは、水晶体の濁りが進んで適切な視力が確保できなくなっている可能性があります。このような場合は、白内障が原因かどうかを診断し、適切な治療を受けるためにも、速やかに眼科医の診察を受けることをお勧めします。
遠くの標識が見えにくく違和感があるが傷みや充血はない
白内障が進むと次第に見えづらさが増していきますが、水晶体には毛細血管や神経が通っていないため、白内障自体が引き起こす痛みや眼の充血はありません。
もし視力の低下や見え方の違和感に加えて充血や痛みがある場合は、他の眼の疾患が原因である可能性が高いです。
ステロイド剤を長期間使用している
喘息の治療で吸入器や内服薬などのステロイド剤を長期間使用すると、白内障を発症するリスクが高まるとされています。
糖尿病を発症している
糖尿病によりインスリンの分泌が不足し、慢性的な高血糖状態が続くと、目の水晶体にソルビトールという糖が蓄積します。これにより、白内障の発症リスクが高くなるとされています。
糖尿病は、白内障と同様に、初期段階での自覚症状が少ないことが特徴です。糖尿病の診断を受けた方は、血糖値の適切な管理を内科医の指導の下で行い、定期的な眼科診察を通じて病状のチェックを怠らないようにしましょう。