ICL(または眼内コンタクトレンズ)は、目の内部に小さなレンズを埋め込むことで近視、遠視、乱視を補正し、裸眼で物を見えるように改善する屈折矯正手術です。
この手術の安全性と効果は広く認められており、全世界で200万眼以上の施術実績があります。 2014年には、STAAR Surgical社製のICLが厚生労働省の認可を受け、国内でも広く施術が行われています。
以下では、ICL手術の詳細やメリット、デメリット、リスク、さらにレーシックとの比較について説明します。
ICLとは

ICL(眼内コンタクトレンズ)は、目の中に特殊なレンズを挿入して近視、遠視、乱視を補正する屈折矯正手術です。この手術では、コンタクトレンズのような日常的な着脱やメンテナンスが不要となります。さらに、必要に応じてレンズを取り除き元の目の状態に戻すことが可能です。この高い可逆性が普及の一因となっています。
ICLは術後、長期にわたる効果が確認されており、レーシックと比べても視力の低下が少ないことが特徴です。ただし、強度近視の方の場合、徐々に近視が進行することで数十年後にはICLを入れたばかりの状態と見え方が異なっていることがあります。
また、老眼や白内障の影響で遠くが見えにくくなる場合もあり、その時はICLを取り除いて白内障手術を検討されることが多いです。そのため、ICLを検討される際には、手術によって得られるメリットの期間を考慮に入れることが重要です。
手術方法

手術は両目合わせても15~20分程度で終了します。
- 瞳孔を拡大させ、点眼麻酔を行います。
- 角膜を約3mm切開し、切開部からICLレンズを挿入します。
- レンズは折り畳まれた状態から眼内で自然と広がります。
- 眼内で広がったレンズの両端を虹彩の下に入れ、レンズを固定します。
- 瞳孔を収縮させ、手術終了となります。
切開した角膜は自然治癒しますので、縫合の必要はありません。
費用
ICL手術は自由診療で、費用は医療機関によって45万円~80万円程度と大きく異なります。医療機関を選ぶ際には、費用だけでなく医師の経験や技術、フォローアップの質なども慎重に検討し、全面的に評価することが重要です。
ICLを安く受ける方法や利用できる制度については下記をご参照ください
当院の費用
適応検査代(術前検査代を含む) | 5,500円 |
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通常レンズ(片眼) | 300,000円 |
通常レンズ(両眼) | 600,000円 |
乱視用レンズ(片眼) | 330,000円 |
乱視用レンズ(両眼) | 660,000円 |
ICLのメリット・デメリット
メリット
- 「メガネやコンタクトレンズの煩わしさがない」
裸眼で物を見ることができるため、メガネやコンタクトレンズの不便さが解消されます。 - 「手術後の視力回復が早い」
術後は視力回復が早く、多くの患者様が次の日には視覚の改善を感じます(ただし、激しい運動は術後1ヶ月程度控える必要があります)。 - 「適応範囲が広い」
治療が適応となる範囲が広く、レーシックが適応外になった方でも治療を受けられることが多いです。 - 「安全性の高い手術として確立されている」
日本で広く行われている白内障手術を基にした手術手技で、手術方法が確立されています。 - 「可逆性がある」
レーシックのように角膜を削らないため、必要に応じてレンズを取り外して元の状態に戻すことが可能です(また、角膜を削らないためドライアイにもなりにくいです)。 - 「近視戻りがない」
角膜の強度が変わらないため、視力のリバウンド(近視の再発)がほとんどありません。
デメリット
- 「費用が高額になる」
自由診療でレンズも高価なため、手術費用が高額になることがあります。 - 「手術を受けられるまでに時間を要する場合がある」
国内にレンズの在庫がない場合や海外でのオーダーが必要な場合には、手術を受けられるまでの時間が長くなることがあります。 - 「ハロー・グレア」
術後に光がにじむ、ギラギラとまぶしく見えるなどの症状(ハロー・グレア)が稀に発生することがあります(ほとんどの場合、時間が経つにつれて改善されます)。 - 「術後稀に感染症を引き起こすリスクがある」
ICL手術は眼球内部で行われる内眼手術に分類され、非常に低い確率(約0.02%)で術後に感染症を引き起こすリスクがあります
ICLのリスク
ICL手術における最大のリスクは、術後の感染症です。当クリニックを含む多くの医療機関では高いレベルの感染症対策が実施されていますが、感染の可能性を完全に排除することはできません。医療機関では感染予防と滅菌対策に全力を尽くしていますが、患者様にも医師の指示に従って、手術前後の点眼薬の使用や術後の過ごし方に注意していただく必要があります。
感染症
ICL手術では水晶体と虹彩の間にレンズを配置する際、メスで3mm程度の切開を行います。この切開部から細菌が入り込むと感染症が起こるリスクがあります。手術後は傷口が完全には塞がっていない状態のため、目に異物が入ったり、目を触る行為は感染症の原因となるため、手術後の行動には特に注意が必要です。
レンズのズレや回旋
手術後に強い衝撃が目に加わると、稀にレンズのズレが生じることや、回旋することがあります。
ほとんどの場合、レンズの多少のズレや回旋は視力に大きな支障をきたしませんが、乱視矯正用のレンズの場合、わずかなズレでも視力に影響が出ることがあります。そのような場合、レンズの位置を調整するために再手術が必要となることがあります。
レンズの入れ替え
ICLはレンズのサイズと度数を決定するために、手術前に通常2回以上の精密検査を実施しますが、手術後稀にレンズのサイズや度数が合わない場合があります。その場合にはレンズの入れ替え手術を検討する必要があります。
視力回復は、早い方で翌日、多くの方が1週間程度で実感し、約1ヶ月でレンズが完全に安定します。手術後のレンズが合っている否かは、この期間の定期検診で判明します。
当院では、手術後3ヶ月間は保証期間とし、この間にレンズが合わないと医師が判断した場合、無料でレンズ交換を行います。
ハロー・グレア
ICLレンズの中央部には、小さい穴が開けられており、これによって房水と呼ばれる液体(眼圧や虹彩の位置を維持する役割がある)がスムーズに循環し、合併症のリスクを減少させることができます。
このレンズの穴による光の反射で、一部の方がハロー(光に輪がかかったように滲んで見える症状)やグレア(光がギラギラとギラついて見える症状)といった光の乱反射を感じることがあります。感じ方には個人差がありますが、時間が経つにつれてこれらの症状は軽減され、多くの場合、手術後1~3ヶ月で気にならなくなります。
角膜内皮細胞の減少
ICLだけでなく、一般的な目の手術では角膜内皮細胞が減少するリスクがあります。角膜内皮細胞は角膜の透明性を保つ役割を持ち、一度減少すると再生しないとされています。また、コンタクトレンズの長期使用でも角膜内皮細胞が減少することがあります。
最新のICL(ホールICL)手術では、このリスクは大幅に軽減されていますが、角膜内皮細胞の密度が一定の基準値以下の方には、ICL手術を受けることができません。
白内障
従来のICL(中央に穴がないタイプのレンズ)では、レンズが水晶体に触れることで稀に白内障を発症することがありました。しかし、現在のホールICL(中央に穴があるタイプのレンズ)では、この問題が大幅に減少しましたが、リスクが完全になくなったわけではありません。
眼圧の上昇
ICL手術後には眼圧が一時的に上昇することがあります。特に挿入したレンズが大きい場合、閉塞隅角緑内障のリスクがあるため、手術後の定期的な検診は欠かさず受けてください。
レーシックとは
レーシック(LASIK)手術は、エキシマレーザーを用いて角膜の形を変えることで近視、遠視、乱視を矯正します。ICLと同じく術後は眼鏡やコンタクトレンズなしで生活が可能となります。手術は約10分で終わり、安全性の高い手術として世界で最もスタンダードな屈折矯正手術です。
手術方法

- 眼を洗眼し、麻酔の点眼薬を手術する目に点します。
- 角膜にFSレーザーを照射し、均一なフラップと呼ばれる円形状のふたを作成します。
- フラップを角膜から完全に切り離すことなく、一部残したままの状態で、角膜本体からめくりあげます。
- エキシマレーザーを角膜に照射し、角膜の屈折率を矯正します。
- フラップを戻し、フラップ下をよく洗浄することで余分な異物を徹底的に洗い流します。
- フラップが自然に定着されるのを待ちます。(数分間)
費用
レーシック手術の費用は、医療機関よって両目で25万円〜40万円程度となります。
※当クリニックでは術前検査・レーシックの手術は提携先のクリニックで行います。
レーシックのメリットとデメリット
メリット
- 「裸眼で過ごせる」
メガネやコンタクトレンズが不要になり、日常生活を裸眼で過ごすことができます。 - 「術後の視力回復が早い」
個人差はありますが、ほとんどの方は手術直後に視力の回復を実感されます。 - 「ICLに比べて費用が安い」
デメリット
- 「近視が強すぎると適応外になる」
近視が強い方(原則-6.0Dまで)や角膜が薄い方には治療を受けられないことがあります。 - 「手術後、元の状態に戻すことができない」
角膜を削ることで視力矯正をするため、元に戻せません。 - 「低確率で近視の戻り(近視の再発)が発生する」
稀に視力が再び低下することがあります。 - 「ハロー・グレア」
術後にハロー・グレアが起こる可能性があります(※時間の経過とともに解消します)。 - 「ドライアイ」
一時的なドライアイが起こる可能性があります。
レーシックへのネガティブなイメージについて
日本ではレーシックに対して否定的な印象を持つ方も珍しくありません。過去には「レーシック難民」という言葉がインターネットで頻繁に見られました。これは、レーシック手術を受けたものの期待した結果を得られず、適切なアフターケアやサポートを受けられなかった患者様たちを指す言葉です。患者様は手術を誰が行ったかさえ知らされていない場合があると言われています。この問題が起こった原因には、非眼科医が手術を行ったこと、十分な説明がなされなかったこと、医療機関の管理体制が不十分だったことが挙げられます。このときメディアはレーシックのリスクを強調しましたが、実際にはレーシックは国際的に認められた安全な屈折矯正手術です。日本でのネガティブなイメージの広がりは残念なことです。
これを踏まえ、ICLでは、手術を行う医師が認定資格を持っていることを必須とする認定医制度が設けられています。現在レーシックが一時的に下火になる中、ICLが普及していますが、医療機関だけでなく患者自身も、トラブルを避けるために必要な知識を持つことが重要です。手術を検討する際は、費用だけでなく手術を行う医師や「アフターケアは充実しているか」なども確認することが大切です。
ICLとレーシックの違いについて
レーシックとICLは術後に裸眼で生活できる屈折矯正手術ですが、治療方法に違いがあります。ICLは眼の虹彩の後ろにレンズを挿入する治療法で、レーシックはレーザーを用いて角膜を調整する治療法です。特にレーシックは角膜を削って視力を矯正するため、角膜に十分な厚さが必要です。
軽度の視力矯正が必要な場合には、ICLよりもレーシックの方が向いている場合もあります。どちらの手術が一概に優れているわけではなく、患者様の目の状態によって適している施術が異なります。当院では、両手術に関して豊富な経験を持つ医師が患者様の目の状態を総合的に判断し、最適な治療を提供しますのでご安心してください。
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ICL |
レーシック |
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手術方法 |
虹彩と水晶体の間にレンズを挿入して視力を矯正する |
角膜をレーザーで削ることによって視力を矯正する |
適応条件 |
強度近視や角膜が薄い方も治療を受けられる |
近視が強い場合(原則-6.0Dまで)や角膜が薄い場合には治療を受けられないことがある |
視力の安定性 |
長期的に安定 |
稀に近視の戻りが発生する |
見え方 |
鮮明に見える |
コントラスや見え方の質に若干影響が出る場合がある |
可逆性(元に戻せるか) |
万一の場合はレンズを摘出して元に戻せる |
角膜の形状を削ることで視力を変化させるため、元に戻せない |
ドライアイ |
発生することはほとんどありません |
角膜の知覚神経を切断するため、一時的にドライアイが発生することがある |
費用 |
レーシックよりも高額 |
高額 |